音楽室
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音楽室 Zoot Sims ”You Go To My Head”

”ZOOT SIMS IN PARIS” Released on 1961(United Artists Records)

 

Personnel:Zoot Sims (tenor sax)、Henri Renaud (piano)、Bob Whitlock (bass)、Jean-Louis Viale (drums)

1 Zoot’s Blues

2 Spring Can Really Hang You Up The Most

3 Once In A While

4 These Foolish Things

5 On The Alamo

6 Too Close For Comfort

7 A Flat Blues

8 You Go To My Head

9 Savoy

 

若い頃は誰しも、明るい未来を夢見て、「どういうふうに生きたいか」を考えるものだろうが、ある程度の歳になると、ふと「どういうふうに死にたいか」を考えることがある。

 

ズート・シムズは主に1950年代から1960年代にかけて活躍したテナー・サックス奏者で、ベニー・グッドマンやスタン・ケントンなどのビッグバンドの一員として作品を残すとともに、自らのリーダー作で数々の名盤を世に送り出した。

 

レスター・ヤングを手本とし、ビッグバンドを主戦場にしていた奏者なので、オーソドックスな癖のない演奏スタイル。逆に言えば、激しく創造的なアドリブは少ないということであって、そこは、人によっては「古臭い」と感じるだろう。

 

個人的には、テナー特有の音の重さ・パワーに加え、その音には叙情的な「歌心」が溢れていて、大好きな奏者である。”You Go To My Head”は多くの奏者が演奏したジャズのスタンダードであるが、遥か遠い過去から響いてくるようなズートのこの音は、いつ、何度聴いても胸に迫るものがあり、傑出している。

 

同時代をウェスト・コースト・ジャズのベーシストとして生き、ズートと親交があったビル・クロウの話(村上春樹が翻訳した作品あり)では、ズートはとてつもない大酒飲みで、ベロンベロンになって最後には演奏できなくなるまで飲んだらしい。

 

そして、いつも冗談を言って豪快に笑い、誠実で、誰からも好かれる好漢だったそうだ。

 

毎晩毎晩、力いっぱいテナーを吹きまくり、飲んで、笑って、皆から愛される。ある意味、理想的な人生だったのだろう。

 

ズートは1985年に59歳で亡くなったが、晩年のこんなエピソードがある。

 

ある日、大酒飲みが祟って体を壊し、入院したズートを心配して、クロウら昔の仲間数人がズートの病室を訪れた。

 

ところが、既にズートには、自らの病室のドアを開ける力すらも残っていなかったのである。

 

クロウ達は、ガッシリとした体格で豪快に笑っていた若き日のズートを思い起こし、その痛ましい姿に言葉を失った。

 

しかし、ズートはそんな仲間の気持ちを察したのか、立ちすくむ皆に向かって、こう言って笑った。

 

「やあ、こんなに重いドアは、世界中探してもどこにも無いね」

 

昔のジャズの巨匠達には様々な常識外れのエピソードがあるものなのだが、この短いエピソードからは、クロウ達がどれほどズートという好漢を愛し、その死を悼んだかが感じ取れて、最も心に残っているもののひとつである。

 

話を冒頭に戻そう。

 

「どういうふうに死にたいか」については、人によってそれぞれ答えは違うだろうし、明確なイメージを持つのは難しいであろう。

 

ただ、それなりの時間を生き、それなりに周囲の人々の生き方・死に方を見てきた今、(酒は付き合いでしか飲まないが)自分にとっての答えは、このエピソードの中に既にあるような気がしているのである。

 

 

 

-住吉-